必要は発明の母 ~初めのころに学んだこと~

2013/10/02

「1985年にBNIを立ち上げたとき、ここまで大きな組織になることを想定していましたか?」
最近、よくこう聞かれます。BNIは、今では50以上の国で約6,500チャプターを有しています。とはいえ、昔からそうだったわけではありません。
最初のチャプターを立ち上げたときには、BNIのことはビジネスだとすら考えていませんでした。私はすでに事業を経営していて、この事業のために、もっとビジネスを増やす方法が必要だったという、ただそれだけのことだったのです。当時私は、人事に関わる問題に重点を置いたマネジメントコンサルティングを行っていました。ビジネスは好調で、新しい家を購入する余裕もできました。ところが、引っ越しをして間もなくのことです。私は一番の顧客を失うことになりました。この顧客の経済状態がそんなに深刻だったとは知る由もありませんでした。銀行の住宅ローンというのは愉快なものです。何があっても、毎月きちんと支払えというのですから。要するに、もっと多くのビジネスが必要でした。それも素早く。どうすればそれを実現できるのかを考えました。
どのような選択肢があるでしょうか。広告を出す? 多くのビジネスにとって、中でも小売業にとって、広告は必須であり、非常に効果的な方法にもなり得ます。しかし、ビジネスコンサルタントのターゲットとなるマーケットは限られており、広告といっても簡単ではありませんでした。
ダイレクトメールも試しました。専門家によれば、ダイレクトメールでは2パーセントの反応があれば良い方だといいます。ビジネスコンサルタントである私の結果は、0パーセントでした。
盛大なPRを行う方法もありましたが、小規模ビジネスにとっては、PRにかかるコストや制約は、広告の場合とほとんど変わりがありませんでした。
オフィスに缶詰めになってテレアポをする方法もありました。コーヒーと電話を傍らに置いて、電話の相手にビジネスを求める方法です。テレアポのやり方は知っていました。いくつかの会社のマーケティング部門で教えてきたからです。しかし、テレアポの研修をやりすぎたせいで、自分では二度とテレアポをする気にはなれませんでした。絶対にです。もっと良い方法があるはずだからです。

もっと良い方法があるはず

実のところ、私にとって答えは明白でした。これまでにも、リファーラルによって、あるいは、講演会などを機会にして、新規のビジネスを獲得していたからです。私は次のことも分かっていました。最も質が高く、長続きし、そして収益性の高い顧客というのは、他の顧客の紹介で獲得してきたということです。そこで、リファーラルを得るために、既存の顧客に連絡を取り始めました。
それから、こんなことを考え始めました。獲得したビジネスのうちで、最良のものはリファーラルによるビジネスでした。しかし、これまで既存の顧客以外の人からのリファーラル数を確実に増加させる方法はありませんでした。他の事業者と同じく、リファーラルは仕事上の知り合いから、インフォーマルなネットワークを通じて獲得してきました。とはいえ、ほとんどは後になって紹介だったと分かったのでした。つまり、法人顧客でかつ満足した顧客が、機会さえあれば(そして考えが及べば)、自分自身の顧客や知り合いに対して、私のことを紹介してくれていたわけです。ただ、その際に私に知らせてくれることもあれば、そうでないこともありました。というわけで、私も新しい顧客が誰かからの紹介で来たのかどうか分かる場合もあれば、分からない場合もありました。
必要だったのは、体系的なプログラムを通じて、事業者のためにリファーラルを生み出すネットワーキングシステムを一から構築することでした。それは世界中どこを探しても大学では教えてくれないようなものです。多くの試行錯誤を重ねた末、私は体系的な方法でリファーラルを生み出すフォーマルなシステムを構築しました。
そして、初期のチャプターのいくつかを使って、あらゆる新しいアイディアやコンセプトを試しました。そして、うまくいったものは採用し、そうでなかったものは採用しませんでした。一年もしないうちに、私たちは南カリフォルニアで20チャプターを立ち上げました。このとき、私は自分のアイディアが大きく成功したことに気付いたのです。どうやら、リファーラルを必要としていたのは私だけではなかったようです。

学習曲線

とはいえ、楽な道のりではありませんでした。私の最初の試練は、学習における「水漏れバケツ症候群」と私が呼んでいるものです。誰かをトレーニングするとしましょう。その際に少しだけ情報が漏れてしまいます。その人が別の人をトレーニングすると、さらに多くの情報が漏れます。これが3世代目、4世代目と進むうちに、半分の情報がなくなってしまうのです。半分の情報が欠落していると、話し手自身、何かが足りない気がしてくるものです。
では足りない分はどうするのでしょうか?
足りない分は、話し手が勝手に内容を付け加えてしまいます。問題は、その付け加えが必ずしも良い内容とは限らないことです。早い段階で、私たちは、すべてを文書化した「トレーナーをトレーニングするための資料」を作る必要があることに気付きました。BNIの仕組みの一貫性とプログラムの拡張性を維持するためです。国中にBNIが広がっていく過程で、そして世界に広がっていく過程で、これはますます重要になっていきました。
もう一つ大切なことを学びました。それは、メンバーやディレクターが結束するために必要な、統一的なビジョンをつくることでした。シンプルで、覚えやすく、お互いのためにリファーラルを生み出すというミッションに合致するものです。また、体系化されたトレーニングの内容と整合性のあるものにする必要がありました。
私は次のことを理解していました。他の人のビジネスの成功を手助けすることこそ、リファーラルで自分自身のビジネスを成功させる最善の方法です。また、健全でポジティブなビジョンを組織全体に浸透させることが組織に大きなメリットをもたらすことを理解していました。
そこで私は、そのようなビジョンを簡潔に言い表す生き生きとしたフレーズを探しました。そして、たどり着いたのが、「ギバーズ・ゲイン」でした。このシンプルな2語には黄金律が詰まっています。それは、私自身、そしてBNI メンバーの心に響くものでした。それ以来、「ギバーズ・ゲイン」という普遍的かつ覚えやすいフレーズが、BNIの理念となったのです。そして、BNIが活動するすべての国において、組織に浸透していったのです。
BNIの誕生は、「必要は発明の母」の典型例だといます。とはいえ、明確な理念と拡張性のあるシステムがあったからこそ、BNIは発展を遂げることができたのです。これは今日の事業者にとって大いに参考になることではないでしょうか。