「ネットワーキング」の定義を見直す

2013/01/15

20年前のことですが、私は『The World’s Best Known Marketing Secret』の初版 を書きました。その中で、ビジネスを発展させる方法に関して、いくつかの用語を解説しました。それらは、当時のビジネス界では目新しいものでした。

ビジネスの発展に関する言葉で、多義的に使われていると感じた用語の一つが、

「ネットワーキング」

という言葉でした。ネットワーキングとは「名刺集めなどを通じて巨大な人名データベースを構築することだ」と思っている人もいれば、「人前に出て見込み客を見つけるための機会」と捉えている人もいます。中には、ネットワーキングのことを単なる社交目的のおしゃべりや飲み会にすぎないと思っている人もいます。

そこで、私はネットワーキングの概念に関する無数の認識を一つにまとめ上げることを試みました。そして、仕事や対人関係におけるさまざまな経験から、ネットワーキングとは次のことを意味するのだという結論に達しました。

「売り上げのアップ、知識や影響範囲の拡大、あるいはコミュニティーへの貢献につなげるために、コンタクトを構築および使用するプロセス」

この定義は長い間有効だったものの、やはりどこかで限界が訪れました。

そこで、私はマイク・マセドニオ(Mike Macedonio)とドーン・ライオンズ(Dawn Lyons)を共同経営者として、リファーラルインスティテュートという組織を作りました。私たちは、世界中の事業者に対して、リファーラルを獲得するためのシステムを構築する手助けを行いました。そして、そうした私たち全員の経験を通じて気づいたことは、ネットワーキングという言葉の意味が進化しているということです。そこで、改訂版の新しい定義は、時代の変化や今日のビジネス環境を反映したものになっています。

もちろん、オリジナルの定義が完全に間違っていたというわけではありません。正しい部分については維持されるべきです。その一方で、今ではしっくりこない部分がありました。

一つは、「使用する」という表現です。この言葉は今日ではきつい響きがします。冷たい感じさえ覚えます。今日では、プライベートであれビジネスであれ、何かを獲得するために誰かを「使用する」というコンセプトは、ネガティブな反応を引き起こしがちです。もう一つ吟味が必要だったのは、「コンタクト」という言葉です。この言葉は、最近では「データベース」のような意味で用いられるようになりました。データベースというのは、計画的で、非個人的で、実用主義的で、そして、やはり何となく冷たい感じがします。

多くの議論の末、私たちは次の修正案にたどり着きました。以前よりも正しくネットワーキングのコンセプトを表現していると思います。

「売り上げのアップ、知識や影響範囲の拡大、あるいはコミュニティーへの貢献につなげるために、信頼関係を構築および活用するプロセス」

小さな変化に見えるかもしれませんが、重要な違いがあります。信頼関係を「活用する」というのは、他の人との、よりダイナミックで、よりインタラクティブで、そして、互恵的な関わり方を意味します。単に人間関係を「使用する」のではありません。「使用」が一方通行の道だとすれば、「活用」は双方向の幹線道路のようなものです。後者の方が、より強力で、今日の私たちの姿、あるいは、本当の信頼関係を達成するために目指すべき姿に近いといえます。このような方法でネットワーキングを行う人は、ただ「使うだけ」の人よりも、明らかに優れた結果を出しています。

ネットワーキング:一つのパラダイムシフト

次に、「コンタクト」から「信頼関係」へのパラダイムシフト(発想の抜本的転換) についてお話します。事業者のための人脈構築について話をする際、私は以前から「ハンティング(狩猟)」と「ファーミング(農耕)」の違いについて触れてきました。「ハンター」は一つのビジネスが終わると次へと駆け足で移動します。名刺交換をしても、その先、相手と関わりを持つことはほとんどありません。彼らは、ただデータベース(別名「コンタクト」)に名刺を加えることに精を出すだけです。そして、どんどん膨れあがっていくリストに新たな人を加えるべく、また走り出すのです。

リストが大きければ、それだけ「ハンティング」の成果も大きかったということです。そして、彼らは、しばしばそれを理由に「ネットワーキング」がうまくいっていると勘違いしてしまいます。

一方、「農耕」をする人たちを見てみましょう。彼らは、自分の人脈に加えたい大切な人たちとの間で、発展性を宿した、正真正銘の揺るぎない信頼関係をはぐくもうとします。それは、自分だけが得をするような関係ではなく、互恵的で双方向型の、揺るぎない関係です。そこでは関係する全員に恩恵があります。なぜでしょうか?それは、時間をかけて相手を十分に理解し、信頼関係を構築すれば、自分がリファーラルを出す際にも、彼らにリファーラルを出しやすくなるからです。

何の変哲もない二つの言葉を置き換えただけで、オリジナルの定義をチューニングし、より本当の意味に近い、効果的なネットワーキングの定義にすることができました。改訂版の定義は、私たちが日頃伝えているネットワーキングのスタイルとより合致したものになっています。それは私たちが本当に効果的だと知っているネットワーキングの方法です。

ビジネスネットワーキングで成功するには、次のことを理解している必要があります。ビジネスネットワーキングとは、他の人を手助けすることを通じて、自分のビジネスを発展させることです。あなたが誰かを助けると、その人はあなたを助けよう、あるいは、自分の知り合いをあなたに紹介しようという気持ちになります。つまり、ネットワーキングとは、リファーラルをベースとしたビジネスを構築するためのプロセスです。ネットワーキングを通じて、ポジティブなメッセージを効果的に伝達することができます。そして、リファーラルとはその先にある結果なのです。