ビジネスネットワーキングにおける3つの動向(続き)

2011/03/16

今後数年で予想される、ビジネスネットワーキングにおける3つの動向、の続きをお届します。

1. 融合
2. 教育
3. 連合

教育

世界の大学で、ネットワーキングやソーシャルキャピタルについて教えるようになる、などと期待してはいけません。大学のシステムというは、官僚制の産物です。大学の教育は、小規模ビジネスが発展する時代の波に乗り遅れてしまっています。あまりにも、遅れているので、大学の教育が時代に追いつくことは、もはや期待できないと思いはじめています。フルタイムで働いている教授たちは、ほとんどの場合、経営を行ったことがありません。現実世界で起きていることから、完全に離れてしまっているのです。このことは、小規模ビジネスに関して、特に当てはまります。
世界でも、ネットワーキングとソーシャルキャピタルを専門にしたコースを開設している大学は、1つか2つしかありません。この状況がすぐに変わるとは思えません。カリキュラム設定の責任を負っている、フルタイムの大学教授は、ビジネスネットワーキングを確固たる科学とは考えず、大学で教えられるものではないと思っているのです。
彼らは、簡単に言えば、間違っているわけです。ネットワーキングは教えることが可能であるだけでなく、実際に世界中で教えられているのです。ただし、学校で教えられているのではありません。
販売の技術や商談を成立させる技術が大学の外で教えられているように、ネットワーキングは、ますます、大学の外で教えられるようになるはずです。
今後はネットワーキングとソーシャルキャピタルに関する教育は、民間の専門教育機関が担う傾向にあると思います。それは、ちょうど販売技術に関して、民間の機関が教育産業の市場を制しているのと同じことです(これもまた、情けないことに、多くの大学が失敗している分野の一つです)。
民間の教育機関について注意が必要なのは、教育を行う企業が、その専門分野に関して本当に知識を有しているのか、消費者がしっかりと把握している必要があるということです。ネットワークの仕方を知っているけれども、その過程を人に教えるまでには至っていない。私はそういう人をたくさん見てきました。
私は最近、次のような人物に出会いました。彼はビジネスの講師としては完全に失敗したので、次はネットワーキングの講師として腕試しをすることにしたのです。実際のところ、彼の経験といえるものは、単に以前に別の教育機関でネットワーキングのコースを受講したということだけでした。コースを修了したのだから、教える資格があるはずだ。こう考えたのです。ある日、私は彼がネットワーキングをしているのを見ることができました。彼に教える資格があるとはいえませんでした。
消費者の皆さん。注意しましょう。ビジネスネットワーキングのコースを受講する際には、教材を作った企業とトレーニングを行う講師の質を確かめる必要があります。こうしたトレーニングについては、民間機関が行うケースが増えています。消費者側が十分な注意を払う必要があるのです。

連合

今後数年間で、ネットワーキング・グループ間で連合をつくる試みが行われると考えています。同時に、私の考えでは、こうした試みは大きな困難を伴うか、失敗に終わるでしょう。
当然、倫理規定やビジネスネットワーキングの教育カリキュラムを体系化する必要があります。しかし、前述のように、こうしたトピックに関する大学レベルの教育はほとんど行われていません。次の10年でこの状況が変わるとは、とても考えられません。
目的に応じてさまざまな連合・協会が存在しています。ここで想定している組織として、WOMMA(the Word Of Mouth Marketing Association(クチコミマーケティング協会))が要件を満たしていると言う人もいるかもしれませんが、それは違います。私が聞くところによると、WOMMAは非常に良い組織だということです(きっと良いクチコミのおかげでしょう)。しかし、WOMMAは、ここで私が想定している対面型のネットワーキングというよりは、バズ・マーケティングとソーシャルメディアに焦点を当てています。
WOMMAが成功しているのには、さまざまな理由があります。最も重要な点は、WOMMAが成功した要因の一つに、WOMMAのメンバーが多様で、競合関係にない企業によって構成されているという点です(例:AT&T、Coca Cola、Intel、Sony、ESPN)。
ネットワーキング・グループ間で連合をつくるとなると、ある程度の重複が生じることが考えられますし、実際に重複が生じるはずです。場合によっては、競合関係が生じるかもしれません。こうした理由からだけでも、ビジネスネットワーキングの発展を目的とする連合をつくることは、困難を伴うか、あるいは、出だしで失敗することになるでしょう。おそらく、これも、発想は良いのだが、うまくいかないアイディアの一つなのでしょう。
ビジネスネットワーキングの分野では多くの変化がありました。中でもテクノロジーは大きな変化です。しかし、何といっても最大の変化は、この分野自体が認知されるようになったことです。1980年代後半に、私が初めてビジネスネットワーキングに関する本を書いたときには、このテーマの書籍や資料は、ほとんど存在しませんでした。

メディアのインタビューを受けた際に最もよく質問されたことは、「ネットワーキングなんて、一時的な流行ではありませんか」という質問でした。25年がたった今、同じ質問を受けることはなくなりました。ビジネスネットワーキングは、その真の価値を評価されつつある一つの学問分野なのです。それでも、私が、初めての著書のためにリサーチをしていたときには、図書館にも、ビジネスネットワーキングの資料は、ほとんど何もなかったのです。
今では、Googleで「ビジネスネットワーキング」を検索すれば、150000000件もヒットします。時代は変化しています。ネットワーキングも同じことです。