あなたの「なぜ」は何ですか?

2016/04/21

~あなたの「なぜ」を知り、私生活とビジネスの両方で夢を実現しましょう~

※新刊『Avoiding the Networking Disconnect』(Ivan Misner, Ph.D. / Brennan Scanlon共著)より。

あなたには、これまで自分の人生を変えてくれた人がいますか?たとえば、コーチであったり、祖父母であったり、先生であったり、叔母であったり、あるいは精神的な指導者だったりするかもしれません。あなたの人生を変えてくれた人は誰だったでしょうか?

若いころのことかもしれませんし、ごく最近のことかもしれません。素晴らしい思い出かもしれませんし、あるいは最悪の思い出かもしれません。どちらにせよ、それこそが、あなたを何かに対して夢中にさせてくれる「なぜ」(理由)なのです。

私にも、人生を大きく変えてくれた人たちが確かにいます。その一人がロメロ先生です。当時私は、南カリフォルニアにあるグラッドストーン・ハイスクールの1年生で、ロメロ先生は歴史を教えていました。この歴史のクラスは、学校の生徒会の代表者を選定するためのクラスの一つでもありました。

生徒会の代表者の選挙といえば、私は中学生のころに何度も立候補をして、そのたびに無念の落選を喫していました。それも接戦だったというには程遠い状態でした。実のところ、最後の選挙では得票数は最下位でした。選挙といえば、いつでも恥をかくばかりで、ただ汚名を重ねるようなものでした。ですから、高校生になったころには、二度と再び生徒会の代表者に立候補しようなどとは思いませんでした。

高校1年になったばかりの初回の授業で、ロメロ先生はクラスの全員に次のように言いました。

「生徒会の1年生の代表者をこの歴史のクラスから選びます。誰か立候補する人はいますか?やりたい人は?」。誰も手を挙げませんでした。そのうち、とりわけ愛きょうがあり人気者だった女子生徒の一人が手を挙げて、言いました。

「ロメロ先生!私がやってもいいんですけど、忙しいから無理です!そんなことしてる時間無いんです」。先生は答えました。「分かりました。無理にとは言いません…ですが、誰も立候補しないようなら、先生が選ばないといけないですね。皆さん、それでもいいですか?」。

生徒たちは、「じゃあ、先生好きに選んじゃって!」などと喝さいで答えました。そこで、先生は教室の中を見渡しました。そして、私の方向を向いてぴたりと止まりました。そして、私の目をまっすぐに見て、「アイヴァン、君はこういうのやりたいんじゃないか?」と言ったのです。私は、答えました。「ええと、あの、まあ、そうですね、ロメロ先生」。

私は、一瞬だけうれしくなりましたが、それもつかの間のこと、クラスのみんなの一声で一気に打ちのめされることになりました。全員がほとんど一斉に、「えー!アイヴァンだけは勘弁!」と言ったのです。さらには、あの忙しくて時間が無いという女の子まで、「ロメロ先生、実はそこまで忙しいわけでもないんです。もし、私でよければ、私やってもいいですよ」などと言うのです。

もちろん、私は彼女がそう言っている間、自分の中で「目の前に本人がいるのみんな分かってる?」ともんもんとしていましたが、それを言葉に出すことはできませんでした。私は、ただじっとその屈辱に耐えていたのです。皆さんはこんな瞬間を経験したことがあるでしょうか?あまりにも肩身が狭くて、カーペットの下に隠れたくなるような気持ちです。あの瞬間、私はまさにそういう気持ちでした。

あのときの体験を、今の自分の状況と比較してみることには意義があります。今日、私は著者として、スピーカーとして、そしてビジネスマンとして、それなりに成功しているほうです。世界の主な大陸にBNIの組織を展開しています。ところが、当時の私はどうだったでしょうか。自信が無く、仲間になじめず、自分のやりたいことで実力を発揮するチャンスすら無かったのです。あの瞬間、私がどれほど屈辱的な思いをしたか、想像してみてください。当時、未来の自分、つまり今現在の私の姿を想像することはできませんでした。あれはまさに、無防備で、痛々しい瞬間でした。

さて、ロメロ先生ですが、私の心中を察したのか、例の人気者の女の子に向かって、ややまゆをひそめながら言いました。「いや、君にはさっき立候補の機会を与えたけど、引き受けなかったじゃないか。なので、私が選ぶことになって、アイヴァンを選んだんだ。だから、彼が代表者だ。はい、それでは教科書の第2章を開いて……」。

教室内にはまだブツブツと不平を言う声もしていましたが、ロメロ先生が決めたことは動かしようがありません。こうして生徒会の代表者は私に決まりました。先生は私の働きに期待してくれたわけです。私は、深く息を吸って、その期待に応えるべく一生懸命に努力することを決意しました。

さて、その翌年のことです。年度末になり、再び生徒会の代表者を選ぶ時期がやってきました。私は、自分が二度と再びやらないと決意した、生徒会の代表者に立候補することを実行に移しました。そして、去年私が代表者を務めることに猛反対したあのクラスメイトたちが、今回は私に投票してくれたのです。それも、大勝利でした。その後の高校生活はというと、私は選挙で負け知らずとなり、生徒会の代表者はもとより、他の役職や生徒会長の選挙でも勝利することができるようになりました。すべてのきっかけをつくったのはロメロ先生です。

先生は私の中に、私自身が見いだすことができなかったものを見いだしてくれたのです。私にあのチャンスを与えることを通じて、先生は私の中に自信を植え付け、それが私の人生に大きな変化をもたらしたのです。こうした学校でのプロジェクトをやり抜くことを通じて、私はリーダーシップのスキルや責任感を身に付けました。ロメロ先生は、成功するための機会を与えてくれることを通じて、私の人生にポジティブな影響を与えてくれました。です。先生は私のために汗を流してくれたわけではありませんが、私のために扉を開いてくれたのです。先生は、私が活躍するための、そして成功するためのチャンスを与えてくれました。そして、私に対して私自身が持つ能力に気づかせてくれたのです。

何年かたって、私はこのときのことが自分の人生にとって重要な経験であったことを理解しました。ですが、自分という人間が形成されていく中で、その経験がどれほど重要な役割を果たしたのか、本当の意味で気づいたのはさらに後のことでした。それは、つい数年前にリファーラル・インスティテュートのセミナーに参加したときのことでした。参加者全員が、自分がなぜ今の仕事をしているかを考えるエクササイズ(Emotionally Charged Connection)を行いました。そのときになって初めて、私は次のことに気づいたのです。私が自分の人生で取り組んできたことは、実のところすべてが、若いころにロメロ先生が私にしてくれたことの反映だったのです。

私が書いたすべての書籍、あるいは私が始めたすべての事業は、どれも他の人に対してチャンスを与えようとする試みでした。活躍し、成功し、人生で成し遂げたいことを達成するためのチャンスです。私自身が誰かを「成功させる」ことはできません。それは、その人自身にしかできないからです。それでも、私には、彼らが夢を実現するための仕組みやプロセス、機会を提供することができます。私は、ずっとロメロ先生が私にしてくれたことを再現し続けてきたのですが、自身の内面を深く見つめ、自分の「なぜ」を知るまでは、それに気づかずにいたのです。

あなたの「なぜ」を見いだすことは、今すぐにでも取り組みたい非常に大切なことです。

なぜなら、それこそが、あなたが今していることに対して、あなたが情熱的になれる理由であり、その理由を知らなければ、個人的な夢であれ、仕事に関する夢であれ、実現することはできないからです。